「鉄道忘れ物市」に行ってきた。 [レポ]
大阪、高槻駅に降り、ふらふらと松坂屋へ向かう。
滋賀からは京都を超えて、1時間かからないくらいで行ける。案外近いものだ。さて、松坂屋なんてハイカラなところに来ることは、普通だったらありえないのだが、今回はこれがあるのだ。
毎年、この時期になると夕方のテレビのニュースで取り上げられる、「鉄道忘れ物市」。取りに来られなかったかわいそうな忘れ物、落し物たちが、新しい持ち主を探す、言わば落し物の里親探し大会である。一度行ってみたいなと思い始めて数年、やっと来ることができた。
この忘れ物市の魅力は大きく二つ。
一つは、忘れ物なので処分品価格であること。
はっきり言って、ありえない価格で物が売っている。中古だけども。
もう一つは、「こんなものを忘れたのか!」というものが売り出されていること、だ。
自分の興味は言わずもがな、後者にある。
松坂屋5階の催事場へとエスカレーターを上がっていった。
午後1時過ぎともあって、大阪のおばちゃんパワーが炸裂中。2F、3F、4Fは人がまばらで、平日のデパートはやっぱりこんなもんかーと思っていたら、ここだけは違った。売り場がそれほど広くはない様子だが、人の量が異常。過密過密。とりあえず人ごみを見守りつつ、色々と物色する。
やっぱり多いのが、傘。忘れ物の定番だろう。
あっちこっちで「バサッ」と傘を広げるおばちゃんたち。先端恐怖症の僕は怯えるばかりだ。開いた傘の、あの周りのポチポチが怖いのなんの。しかし、傘の量がハンパではない。一本130円~500円くらいで、一人で10本くらい買っていく人も。
他に多かったものは、時計。
眼光鋭いおばちゃんに睨まれつつも、カメラを覗く。ブランド物から安物、バッタ物まで。これだけ数があると何が何やらわからないな。
で、メガネも多い。
因みに僕は真ん中右の列の、上から四つ目のセルフレームが好み。
以上の三つがスペースも人の流れもトップクラスだった。
で、誰がかぶったのかわからない帽子を買う人なんているのかと考えながら、奥へ。本コーナーを発見。
面白そうなにおいがする。
念じても、出てこないのが、忘れ物。
「21世紀に勝ち残る条件」を落としてしまった人は、大丈夫だろうか。
合格への決定版を落とすなんて、縁起でもない。
「これらは忘れ物、落し物だ。」という観点で見ると、色々と面白く思えてくる。そんな雑品ゾーンに入っていく。何もこれを落とさなくても…みたいなのが面白いのだ。
寄せ書きのボール。波多野小学校かどこかだろうか。
あーあ…、中学でもサッカー頑張ろう!とか書いてある、いい思い出の品なのに。
忘れ物になることを見越してか、
ハヤマくんは、なかなか先見の明がある。
雑品ゾーンはまだまだ続き、ラックに色々なものが山積みにされていた。
掛け軸とか、
フリークライマー2個とか、
E.T.とか。
E.T.もまさか、落とされるとは思ってなかっただろうに。
ピンと伸ばした指が、どこか切なげだ。
さて、松坂屋さんももう”分かって”いるようで、売ることは出来ないけれど、面白い忘れ物を展示するコーナーが設けられていた。まぁ取材用だろう。
妖しく光る包丁セットやら、
騒音計?電車の音でも計っていたのか。
溶接マスクに、美容師さんのハサミ鞄らしきものまで。
溶接マスク忘れるなよ。
あと、驚いたのが、
レーザーロボ。
いや、だから忘れるなって。
忘れたとして、問い合わせて探してもらったりしてないのかね。
命づな落としたら、おしまいやね。
そんなこんなで、今度は高いものブースへ。
ずらりと並んだ貴金属類におばちゃんたちは目がキラキラ、宝石より輝いていた。案外安いらしい。質屋さんくらい、とのこと。他にも、デジカメやらラジオやらが並んでいる。
なくして諦めたのか、どうなのか。携帯電話もあるかな、と期待していたが、さすがになかった。きっと落し物としては多いのだろうが、プライバシーやらの関係でさすがに売れないだろう。手帳もそうだと聞いた。
ポータブルのゲーム機やソフトも多数。PSPはなかった、さすが。写真のGBカラーは210円らしい。安い。あと、おそらく去年今年で増えたであろうMP3プレイヤー。512Mくらいのサイズだけならまだしも、20Gなんかを落とした人は災難だろう。
逆に考えると、買う方はお買い得。そして、ちょっと興味深いのが、「そのプレイヤーに何の曲が入っているか」だ。どんなアーティストの曲が入っているか、それを見ると大体その人のミュージックライフが想像できる。まして、アニソンなんかが入っていればそれだけで少し笑える。携帯電話ほどではないが、これも割とプライバシーの侵害だろうに。情報ってのは、そんなとこにもバッチリ蓄積されてしまっている。
さてさて、あとは無造作に置かれたものものを人の合間を縫ってちらちらと見る程度。
野球部しっかりしろよ。
あと、マニア御用達のようなものも。5000円で誰が買うのか。
マシンロボ…、Mu-さんなら分かるかもしれない。何かのプレミアムパック?
誰?同人誌落としたの。
誰?mixiたん落としたの。
これは恥ずかしい。落としても取りに来られなかったのかもしれない。
というかJRもこんなの売るなよ。
他に、かなりキツイ格好のフィギュアもあったが(しかもご丁寧に組み立ててある。)、さすがに写真を撮るのがはばかられた。買った奴!ちゃんと持って帰ってからやれよ。
最後に、
アクシデント!
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忘れ物が売り出されるまで残る理由は、大体3種類くらいある。
・忘れてしまったが、取りにいくのがめんどうな(恥ずかしい)場合。
・忘れてしまった”ことを”、忘れてしまっている場合。
・そもそも忘れ物ではない場合。
だ。2と3の境目はひとクセあるが、大体こんな感じだろう。本やらおもちゃなど、多くは1つ目の理由が多い。まぁまぁ、無くしてしまっても構わない、仕方のないものだ。mixiたんは無くして構わなかったかどうか分からないが。
レーザーロボやら包丁セットは、おそらく2つ目の理由ではないかと思う。「なんだか分からないけども、無い」と、うろたえているか、そもそも無くなったことすらどうでも良いか、その辺りだ。
そして3つ目の理由。これは少しずる賢い面があるかもしれない。傘なんかは、もう”いらない”から、意図的に「置いていった」可能性もある。言い方は悪いが、ゴミを電車に忘れ捨てるわけである。エスカレートすれば、テレビやら多少大きめのものを置いて降りてしまう「電車内不法投棄-忘れ物風」なんてことも出来てしまう。まぁまぁ、そんなことまで考えたということだけ、書いておけばいいだろう。
思ったより会場は広くなかったが、なかなか楽しかった。結局何も買っていないが。
忘れ物、鞄やら財布やら、衣類に漫画などなどその形は様々だが、それを笑えるのは「落とした人」を想像できるからである。「それ、忘れるなよ!(笑)」と思うことはすなわち、「忘れちゃうんだよね、気をつけてても(苦笑)。」と同じで、我々はある種そこに癒されているのだ。「他人の不幸は密の味」とは、本当によく言ったものだなぁ。
おまけ。
松坂屋の中のお店が、新装開店するらしい。その看板の写真を一枚。
あらやだ、期待しちゃう。
すごく面白かった。僕も行ってみたい。欲しいものは何も無いけど、いろいろ想像して、ニヤニヤして、買わずに帰る。
by jane (2012-12-22 21:43)