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バランスボールの絶妙なバランス [そこくるりずむ]

バランスボールをした。I田君の家にいつもの三人で向かい、割と広めの間取りに羨望のまなざしを向けつつも、まず目に付いたのはその大きな青色の球体であった。

ヨガボールだとか、フィットネスボールだとか、名前は種々ありつつも、なにやらその異様な存在感に目を奪われて存在を気に留めている人も多いと思う。


バランスボール セーフティ 65cm ポンプ付 DB65P

バランスボール セーフティ 65cm ポンプ付 DB65P

  • 出版社/メーカー: 秦運動具工業
  • メディア: スポーツ


さて、これが意外と燃える。「できそうでできない、けども頑張ればできそう」という絶妙なバランス。例えば、積み上げた座布団十枚くらいの上に座り、ジャンプしつつ一枚を抜き取る、みたいな。例えば、ボール4つのジャグリングとか。例えば、トランプタワーの4段目、とか。それと同じように、「出来なきゃいけない」わけではないけれども「やりたくなる」、そんな意識を高ぶらせるものとして、バランスボールはあるような気がした。

生まれたての子馬のように、あられもない格好でボールの上に跨ったハタチが、懸命に全身の筋肉を使いながら必死で立ち上がろうとする姿は、はっきり言ってグロテスクだろう。我ながらむさくるしい。他人の家でなにやってんだ、ともなった。(でもやめるにやめられない。)

 

人は、なにやらそういう「ちょっとした上達」に、かなりのヨロコビを感じるわけだが、それはなぜかと言うと「そこに見合っていないだけの努力を無駄に重ねたから」なのではないだろうか。つまり、トリビアの泉の能力版?とも言えるかもしれない。人間は、出来なくても良いもの、ムダ知識ならぬ「ムダ能力」が身につくことにヨロコビを感じられる唯一の生き物である、なんてことが言えるかもしれないのだ。

 

バランスボールになると、それは「シェイプアップ」という重大な目的を帯びてくるためにその”出来なくて良いこと”度はあまり高くならないが、ジャグリングなりトランプタワーなりをする意味ははっきり言ってないだろう。あるいは意味づけをするには、ギネスブック的なものによる価値化、ないし身近な人からの価値化をされなければならない。ムダな知識を身につけただけではあまり意味がなく、それを翌日にクラスやオフィスで話して価値化されることによって、その人は快感を覚えるわけだ。

あるいは発表しなくても、そうした情景を「想像しながら」という姿勢だけでも快感は得られる。

 

 

それを上手く突いたのが、テレビゲームなのではないだろうかと思う。もちろんテレビゲームにもジャンルがあるので一概には言えないが、例えばアクションなり格闘ゲームの場合はそうした「身体的な能力の無意味な方向への拡張」が顕著に現れている良い例であろう。ギネスブック的に価値化されれば高橋名人になれるわけであり、身近な人から価値化されれば「地域のヒーロー」になれるのである。

ジャグリングにしろトランプタワーにしろ、完成/実現したものを見たときの畏敬の念はゲームに劣らないものの、そのプロセスには快感があまりない。むしろマゾヒスティックな快感があるだけである。それでは閉じた世界でしか受容され得ない。そこで、テレビゲームはそのプロセスに一時的な快感を(与える要素を)持ち込むことによって、「価値化してくれる身近な人」を増やすことに成功したのである。

一度もダッシュをやめずにワールド8-8をクリアする能力も、波動拳と昇竜拳を使い分ける能力も、身体的ではあるがそこには生産的な活動はない。一部の「やり込み」(低レベルクリアだとか、ノーミスクリアだとか)のレベルにまで行くと、こちらもまたマゾヒスティックでもある。しかし一部ではそうした価値が崇め讃えられる。そうした受容団体も含めた集団的な消費を作り上げるだけのメディアだったからこそ、ゲームは生き残っているのではなかろうか。「出来なかったことが出来るようになることの快感」を作り出すための適度な難易度のバランスを作り出すためのツールとして、ゲームは素晴らしく的を得た娯楽である。

 

そうすると、全てのスポーツはそんなものなんじゃないのか?と思えてくるわけだ。ゲームとスポーツの違いは何なのか。やはりスポーツ=体格、ゲーム=ゲームのセンス、のような図式になってしまうのだろうか。スポーツの世界で価値化されることが出来る人間と、出来ない人間の棲み分けとして、知の世界があったわけだが、それを打ち砕くものとしてゲームが現れたのか、分からない。

 

 

興味本位だけでバランスボールに乗っかってみたのだが、思いのほか色んな方向へ考えが走った。スポーツとは何なのか、あるいはRPGというものとの違いや、トリビアの泉の方向性などなど、まだまだ書けそうではあるが、またの機会にしよう。I君、今度は立てるように頑張ります。


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